2006年06月

またも書いたり

レンタル店を覗いてみたら、「恋文日和」は貸し出し中でした。
残念だなあと思いつつ、またもや現代ものの恋愛小説を書いてしまった。
おおっぴらに公開するほどでもないので、後ほど「非公開部屋」にアップする予定です。
以下、抜粋。

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「本当に死んじまったのか」
悲嘆のあまり入院した母と、その母の面倒で動けなくなった父に代わって、ドイツへ飛んだ俺は、主のいなくなった部屋を茫然と見回した。

日本にいた時と同じように、兄の部屋はきれいに片付けられていた。
本棚にずらりと並んでいるのは、どれも小難しい本ばかりで、エロ本やアダルトビデオなど出てきそうにない。
抱えてきたダンボールを乱暴に床に放ってため息をついた時、机の隅の置かれていたやや大きめの水色の封筒が目に入った。
表に書かれた吉野薫という名には見覚えがなかったが、住所は兄が師事していたピアノ教師の自宅のすぐ近くのようだ。

「男か女か」
もし仮に女だったとしても、あの優等生の相手となれば、おもしろみのない女に違いない。
勝手にそう決め付けて、指先でつまんだそれを、ダンボールの中に弾き飛ばした。
部屋の真ん中に窮屈そうに置かれたピアノは業者に運んでもらうことになっているが、それ以外のものは全て今日中に送ってしまわなくてはならないのだから、のんびり荷物漁りをしている場合ではなかった。

本棚やクローゼットの中のものをひととおり箱の中に詰め込んで、机の引出しに手をかけた俺は、そこにいくつものMDを見つけて首を傾げた。
どれにも白いラベルが貼られ、きちんと日付が付されている。
手のひらに載せたそれをしばらく無言で見つめていたが、見ているだけでは埒があかない。
ダンボール箱に貼ったばかりのガムテームを剥がし、MDプレーヤーを引っ張り出した。

「……今、どうしていますか?」
聞こえてきたのは、若い女の声だった。
「直人がドイツへ行ってしまってから、もう2週間になりますね。そちらの気候はいかがですか?風邪をひいてはいませんか……」
庭に植えてあるクリスマスローズが咲いたとか、猫のミーシャがチョウチョを追いかけていて池に落ちたとか、たわいない事件を楽しげに語る声が耳朶を打つ。
ひとしきり報告を終えた甘く優しい声の主は、かすかに流れるピアノの音に合わせて、ヴァイオリンを弾き始めた。

マイハート弦楽四重奏団

マイハート弦楽四重奏団のコンサートにいってきました。
お隣りの巨匠率いるこの楽団。
今年が10周年記念ということで、東京、京都、兵庫を経て、昨日が本拠地・広島での公演だったわけ。

ドヴォルザークの「アメリカ」はドラマチックですばらしかった!
この曲はチョコが誇る音楽家、アントニン・ドヴォルザークが52歳の時に作曲した曲です。

ニューヨーク・ナショナル音楽院の創立にあたり、院長として招かれたドヴォルザークは、アメリカでの最初の夏休みをアイオワ州のスピルヴィルで過ごしました。
そこで黒人霊歌や民謡を聞き、非常な感動を覚え、半月足らずの短い時間で一気呵成に完成させたのだとか。

水がほとばしるような、色が乱舞するような、機関車が疾走するような、なんとも多彩な曲なのです。
どんな曲だか思い出せない方は是非、聴いてみるべし。

シューベルトの「ロザムンテ」は、「アメリカ」とはうって変わって美しくてロマンチックな曲です。
全体的に盛り上がりには欠けるけど、第3楽章はかなり好きだなあ。

アンコールは地元サービスということで、赤とんぼからモーツアルトまで様々な曲が飛び出して、すっごく得した気分♪
最後の最後に演奏されたアンコール曲。
辻井淳さんのバイオリンが冴え渡ったあの曲は何だったのでしょう?
お会いした時に確認してみなくては。

お疲れ様でした。
ステキな演奏をありがとうございました!

たまには現代小説も

hasu_1.jpg


撮影した写真は白線で囲み、黒い枠を付けるのがお決まりのパターンなのだそうです。
こうすると下手な写真でも多少は良く見えるそうですよ。

24日のブログに冒頭だけ載せていた短編は非公開部屋に格納しました。
手術の前々日に病院を抜け出した青年が、とある山村で出会った少女と淡い淡い恋をするという、ちょっぴりセンチメンタルなお話です。
非公開部屋はパスワード制になっておりますので、興味のある方はこちらからどうぞ。

現代ものも書いてみたいなあ~と思ったのは、きまぐれに買った「恋文日和」というマンガに感動したから。
(小説でも映画でもなくマンガという所がいかにも私らしい)
1~3巻まで出ていますが、2巻に収録されている「イカルスの恋人たち」は秀逸です。
こういうお話が書けたらなあ。
映画になっているようなので、レンタル店で探してみよう。

「バルトの楽園」を観に行きました。
かなり良いお話です。
会津武士道はすばらしい。
ますます会津が好きになりました♪

Light Blueの恋

昨日読んだマンガに触発されて、原稿用紙10枚少々の短編小説を書きました。
冒頭部分だけアップしてみますね。

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**** Light Blueの恋 ****

「自分の死に場所ぐらい自分で選ばせて欲しい」
短い置手紙を残して病院を抜け出したのは、手術の前々日のことだった。
新幹線に在来線を乗り継いで、思いつく限りの田舎を目指す。
濃い緑に囲まれたその場所は北川村と言った。

立ち木にしがみついたり、石にけつまずいたりしながら山の中を歩き続けた。
視界がかすみ、息が切れ、そろそろ限界だと思った時、鬱蒼とした木々に囲まれた暗く閉塞的な視界が開けて、強い日差しに包まれた。

眼前に聳える巨大な絶壁の上に、人と思われる影が立っている。思わず目を凝らした時、被っていた麦藁帽子を勢い良く空に放ったその人は、はるか足元の水面に向かって跳躍した。

陽光を反射して輝く長い髪、空に溶け込んでしまいそうな水色のワンピース、オリンピックの飛込競技を彷彿とさせる見事なフォーム。
驚愕のあまり、一瞬で硬直してしまった俺の脳に活を入れたのは、唐突に起こった水音だった。

ぼろぼろに弱っていたことも忘れて、俺は夢中で駆け出した。
草木をかきわけるようにして水際にたどりつき、そのまま水の中に走り込む。
がくんという奇妙な感覚とともに身体が沈み込み、そのまま水中に引きずり込まれそうになったが、何とか手足を動かして水音がしたあたりに近付こうとした所で、あろうことか、足がつってしまった。

溺れながらも必死で相手の姿を探したが、自分の声と自分がたてる水音以外は何も聞こえない。
何度も水を飲みながら、俺はおのれの無力さに歯噛みした。

(手術台の上で切り刻まれて死ぬのと、川で溺れて水死体で発見されるのと、どっちがましだろう)

そんな思いが一瞬脳裏をよぎったが、もはや選択の余地はない。

(ここが俺の死に場所か)

まあいいかと思った時、身体中の力が抜け落ちた。

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北川村とダイビングで、Nから始まるある人物を思い浮かべた方はかなりの幕末通。
もっとも、小説とは全く関係ありませんが。

119話

「風雲の刻」の119話をアップしました。

石清水八幡宮で行われた最後の大会議。
感情論で押しまくる来島又兵衛と、進撃することがいかに不利であるかを冷静に説く久坂義助。
史実とはとても思えない、手に汗握る場面です。

「忠正公勤皇事蹟」では、来島さんの進撃論を涙を流して留めたのは、久坂さんと大阪藩邸留守居役の宍戸左馬介の二人ということになっています。
決してこちらから戦をしかけていってはならないという藩主の内命を受けていたとのことですが、本当かしらん。

結果的には、「医者坊主などに戦のことがわかるか!」と大喝され、
「東寺の塔に登って、この又兵衛が鉄扇で賊軍を粉砕するのを見物しておれ!」
という罵倒の言葉を投げつけられて、さすがの久坂さんも絶句。

気を取り直して年長の真木和泉に意見を求めた所、真木も来島に賛同。
かくて18日の夜を期して京都へ攻め上ることに決まるわけですが、真木和泉みたいな過激なおじさまに分別のある回答を期待したことが、そもそもの誤りと言えるかも。

大会議の後で「別れの水盃」を交わしたという逸話は「野村靖追懐録」に載っているそうです。
実際は、久坂さん、入江さんの他に、大田市之進がその場におりました。

吉田松陰は人を一生を四季に例えていますが、久坂さんの生涯にもまさしく四季がある。
久坂さんの場合は、秋から冬にかけてがこの上なくドラマチックだと思います。
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