「リセットって?」
わけがわからなくて聞き返すと、
少年は堤防の上に佇んだまま、ちらりとこちらを流し見た。
「リセットはリセットだ。ほらっ、今日、山下が……」
「それって、たまごっちのことを言っているの?」
少しだけ片頬を上げただけで、少年は否定も肯定もしなかった。
いつもの皮肉な笑みよりもさらに皮肉な笑みを見据えたまま、無意識に眉根を寄せていた。
間違っている時は、たとえ相手が誰であっても、容赦なく指摘するような人だから、きっとこれは、彼流の肯定なのだろう。
山下雪乃は自他ともに認めるクラス一の美少女だ。
茶色に染めた長髪にゆるくパーマをかけ、数人の取り巻きに囲まれて女王様のように振舞っている。
そして今日の昼休み、彼女は自分の机に腰掛けて、手の中の「たまごっち」をもてあそんでいた。
「何度やっても、思いどおりに育たないのよね」
モデル並みに長い足をぶらぶらさせながら、ためらうことなくリセットボタンを押す姿が、ふいに脳裏に蘇った。
電子ペットは四六時中世話をしてやらなければ、思い通りに育たない。
そして思い通りにいかなくなると、雪乃はその都度投げ出してしまう。
飽きることなくスイッチを押し、そしてリセットを繰り返す。
数日おきに展開される行為はひどく不毛に思えたけど、別にとがめだてするようなことではないし、そもそも自分のたちの周囲から不毛でないものを見つけることの方が難しいぐらいだから、別段、気にとめたりはしなかった。
他のみんなもそうだと思っていたけど、目の前の少年だけは違っていた。
「よし、今度こそ!」
そう言ってスイッチボタンを押した途端、彼は雪乃の手から「たまごっち」を取り上げた。
「めざわりだ」
絶対零度と言っても良いぐらいの冷ややかな声。
誰かが非難の声をあげたけど、少年にひとにらみさせただけでおとなしくなった。
雪乃がわっと泣き出したのと、少年が窓から「たまごっち」を投げ捨てたのはほとんど同時だった。
--------------------------------
何年か前に爆発的に流行した「たまごっち」が、今また流行っているそうで。
せっせと世話をするのは良いとして、思うようなキャラにならなければあっさりリセット、というのはいかがなものでしょう?
前回のフィーバー時に思いっきりはまっていた私に言えることではありませんが、第三者的な立場から見ると、何となく不気味な気がします。
わけがわからなくて聞き返すと、
少年は堤防の上に佇んだまま、ちらりとこちらを流し見た。
「リセットはリセットだ。ほらっ、今日、山下が……」
「それって、たまごっちのことを言っているの?」
少しだけ片頬を上げただけで、少年は否定も肯定もしなかった。
いつもの皮肉な笑みよりもさらに皮肉な笑みを見据えたまま、無意識に眉根を寄せていた。
間違っている時は、たとえ相手が誰であっても、容赦なく指摘するような人だから、きっとこれは、彼流の肯定なのだろう。
山下雪乃は自他ともに認めるクラス一の美少女だ。
茶色に染めた長髪にゆるくパーマをかけ、数人の取り巻きに囲まれて女王様のように振舞っている。
そして今日の昼休み、彼女は自分の机に腰掛けて、手の中の「たまごっち」をもてあそんでいた。
「何度やっても、思いどおりに育たないのよね」
モデル並みに長い足をぶらぶらさせながら、ためらうことなくリセットボタンを押す姿が、ふいに脳裏に蘇った。
電子ペットは四六時中世話をしてやらなければ、思い通りに育たない。
そして思い通りにいかなくなると、雪乃はその都度投げ出してしまう。
飽きることなくスイッチを押し、そしてリセットを繰り返す。
数日おきに展開される行為はひどく不毛に思えたけど、別にとがめだてするようなことではないし、そもそも自分のたちの周囲から不毛でないものを見つけることの方が難しいぐらいだから、別段、気にとめたりはしなかった。
他のみんなもそうだと思っていたけど、目の前の少年だけは違っていた。
「よし、今度こそ!」
そう言ってスイッチボタンを押した途端、彼は雪乃の手から「たまごっち」を取り上げた。
「めざわりだ」
絶対零度と言っても良いぐらいの冷ややかな声。
誰かが非難の声をあげたけど、少年にひとにらみさせただけでおとなしくなった。
雪乃がわっと泣き出したのと、少年が窓から「たまごっち」を投げ捨てたのはほとんど同時だった。
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何年か前に爆発的に流行した「たまごっち」が、今また流行っているそうで。
せっせと世話をするのは良いとして、思うようなキャラにならなければあっさりリセット、というのはいかがなものでしょう?
前回のフィーバー時に思いっきりはまっていた私に言えることではありませんが、第三者的な立場から見ると、何となく不気味な気がします。